Thoracic surgery
「気胸だから、若くてやせてる男性と思ったのに、この人は、、、」などという会話は時々耳にします。専門医の中でも、気胸と自然気胸をあまり区別できていないと思われる場面もあります。そのような時、できるだけ気胸と自然気胸の違いを説明しています。
ひとことで言えば、“気胸はいろいろな疾患の集合体”です。
いくつかの理由があります。まず気胸の中で自然気胸が圧倒的に多いからです。次に、気胸の初期治療は同じで、胸腔ドレナージ(胸に溜まった空気を持続的に抜く治療)を行うかどうかで、上記いずれであっても共通です。
また、自然気胸は、厳密にはあらゆる疾患を除外して初めて診断できるものです。(従って、そのような知識がなければ、ある病気による気胸(続発性気胸や特殊な気胸)と診断できず、自然気胸と診断してしまいます。)
最後に、自然気胸と嚢胞性疾患による続発性気胸の一部では厳密な鑑別が付かない場合や複合する場合があることです。
患者さんによっては、「原因が知りたい!」「原因はいいから早く治りたい」「早くなおる治療を」など希望されることは、異なります。当科では、患者さんの思いや考えを尊重しながら治療します。
しかし、上記疾患を鑑別することは治療方針に大きく関わりますので、問診や診察にご協力をお願いします。(年齢や画像だけで治療方針を決定することはしていません。)
多くは、10代から20代(若くて)、やせ型(扁平な胸郭)の方に多いという特徴があります。従って、体格は身長が高く、性別は男性に多い病気です。
典型的には、患側(気胸になった側)の肺にブラ・ブレブ・嚢胞という病巣があります。健側(気胸になっていない側)の肺にも病巣がみられる場合があります。近親者の方で、気胸の方がおられる場合があります(約10%)。(遺伝性の気胸は気胸の方が多数おられます)
気圧の変動と自然気胸の発生とのあきらかな関連性は証明されていませんが、日常の診療では台風や長雨の後に自然気胸の方を診療することが多い気がします。
(CT写真:右肺に嚢胞と索状癒着あります)
(手術中写真:嚢胞と癒着が確認できます)
このような胸膜と肺につながる癒着が、気胸発症時に器械的刺激で切断された場合、血気胸になると言われています。他にも矢印のような癒着があります。
本人様の症状とレントゲンの結果(これを重症度といいます)によります。また、学生の方では、試験や学校行事なども考慮します。
レントゲンでの重症度判定は、3段階です。1度なら経過観察、2度・3度は入院加療を原則お勧めします。2度・3度の肺虚脱には、胸腔ドレナージ(持続的な脱気治療)が必要とされています。このため入院が必要になります。
穿刺脱気やソラシックエッグ🄬による治療も行っていますが、それぞれの治療には、利点・欠点があり、全員の方に外来治療はできません。また、ソラシックエッグを挿入した場合でも、安全のために当日の経過観察入院をお勧めする場合があります。
社会人の場合は仕事の都合も考慮しますが、しっかりと治療し早期に職場復帰できるように考えます。
初期治療としては、胸腔ドレナージ・穿刺脱気になります。場合によっては、安静目的で入院することもあります。追加治療としては、手術、胸膜癒着があります。
手術適応(手術が望ましいとされる状態)は、自然気胸では以下のものがあります。
肺に基礎疾患(なんらかの病気)がある方で、その病気で気胸を起こす場合です。治療方針は、それぞれの原疾患や全身状態により決定されます。
気胸に関する専門的な学会の一つに“気胸・肺囊胞性疾患学会”があります。その名称通り嚢胞性肺疾患についても熟知すること、これらに対する知識と経験がなければ、治療に難渋する”難治性気胸”になる場合もあります。
これまで、診療以外にも学会等で気胸に関して発表を繰り返してきました。(「気胸に関する報告」に、ここ数年の活動をまとめています。)
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