ドクターズレクチャー

Doctor's Lecture

整形外科について

整形外科について教えてください。

【整形外科部長:金谷医師】

整形外科は18世紀ころのヨーロッパで小児の骨格異常に対し、石膏ギプスを巻いて変形矯正を行ったという歴史から始まったとされています。これを反映して、歪んだ木を真直ぐな木にくくりつけて変形矯正を行っているイラストが日本整形外科学会のロゴマークにもなっています。整形外科の手術領域は戦争による外傷治療とともに発展し、現在では手術をせずに治す”保存治療”と手術を行う”手術治療”の二つの治療法が主体です。現代では、脊椎(首、腰)、関節、骨、末梢神経、腱、靭帯などのたくさんの病気、けがを治す診療科となりました。

【整形外科部長:金谷医師】

私は医学部卒業後、長い年月が経過しましたが、多くの発展を経験してきました。例えば、ギプスは石膏が主体であったのが、今はプラスチックギプスになりました。バブル時代にはミッキーマウスなどのキャラクターギプスも登場しましたが(笑)。膝や股関節の人工関節も耐久年数は15年程度と私が研修医だった当時の指導医の先生たちは説明していましたが、今では耐久年数はもっと伸びています。各部位の骨折に使用するプレートもどんどん新しいものが出現し、若い先生たちの方が新しいプレートには詳しいくらいです。私が専門としている橈骨遠位端骨折(手首の骨折)ではプレートを用いる手術にて骨折部を整復後しっかり固定できるのでギプス固定期間が短くなることでリハビリを早期に開始でき、患者さまの社会復帰が早くなりました。

金村先生はいかがでしょうか。
ご専門である脊椎外科についてご意見をお聞かせください。

【整形外科部長:金村医師】

脊椎外科においても日進月歩に進化し、医療機器や手術手技の向上により以前に比べて低侵襲でより安全に手術が行われるようになってきています。腰椎椎間板ヘルニアでは内視鏡手術が主流であり、手術に変わる新たな治療法として椎間板内酵素注入療法(ヘルニコア)も選択肢のひとつとなっています。脊椎固定術では筋肉への侵襲を軽減した経皮的スクリュー固定が頻用され、いろいろな低侵襲の固定手術が行われています。また骨粗鬆症性の圧迫骨折において疼痛が長引く例や予後不良例では、早期除痛と日常生活動作の改善を目指して、経皮的椎体形成術(バルーンカイフォプラスティ)が施行されています。さらに圧迫骨折の症例はもちろんのこと、高齢者の脊椎手術では骨粗鬆症治療が非常に重要となっております。

【整形外科部長:金村医師】

ただ脊椎外科において変わらないこともあります。MRIなどの画像診断の精度が向上しても、詳細な問診と診察を行い、正確な神経学的所見、病態を把握することが重要であることは変わりません。MRIで圧迫や狭窄があるからといって、それが症状の原因でないこともあります。患者さまごとに病態や重症度、さらに年齢や活動性、職業などの社会的背景も異なります。手術だけが最適な治療法ではなく、薬物療法やブロック療法などの保存的加療が良い場合もあります。患者さま一人一人にあった良質で最適な治療法を提案させて頂くことが重要であると考えています。

佐々木先生いかがでしょうか。
ご専門である関節外科についてご意見をお聞かせください。

【整形外科部長:佐々木医師】

関節痛は昔から多くの方が困っている症状あり、特に膝関節内のクッションである軟骨を痛めている日本人は1000万~3000万人ともいわれています。また関節痛は元気に生活できる健康寿命を縮める原因の10%ほどを占めており、活動レベルに直結しております。深刻な関節痛の方が受ける人工関節手術の素材(金属・ポリエチレンなど)や手術方法・リハビリは飛躍的に進歩しており、今ではすべての手術の中でも高い満足度を得ることが可能です。また患者様の目標・年齢により骨切りや関節鏡などもあり、ニーズに合わせた幅広い治療の選択肢もあります。

【整形外科部長:佐々木医師】

軟骨以外にも半月板や靭帯損傷は若年の競技者に多く、関節鏡による再建手術を行うことでハイレベルなスポーツへの復帰も可能です。また当院では下肢の神経ブロックを用いることで手術による痛みを軽減でき、早期からのリハビリを行うことができます。いずれにしろ関節痛の治療には手術や薬・注射だけではなく、日々のリハビリや良好な全身状態が重要です。良い結果に必要なのは患者さん自身の気力と体力であり、納得して治療を受けてただき最大限のやる気を引き出せるような診療ができればと思っております。

最後に・・・

それぞれの意見を述べましたが、高齢化社会、スポーツ活動の広がりなど様々なニーズに整形外科領域は今後も発展を続けてゆくと思います。私たちも知識・技術をアップデートしながら良い治療を提供できるよう努力いたしております。

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