Doctor's Lecture
【外科部長:中山医師】
体への負担の少ない治療として、腹腔鏡手術が広く行われています。神戸労災病院外科では、新しい手術機器を備え、腹腔鏡手術に力を入れています。同科の腹腔鏡手術について、日本消化器外科学会指導医、日本内視鏡外科学会技術認定医(腹腔鏡手術の指導医)の中山俊二外科部長にお話を伺いました。
外科は主に手術を行う診療科です。当科では、消化器(胃、大腸、胆嚢、肝臓、膵臓など)の癌、胆石症、胆嚢炎、虫垂炎、腸閉塞、鼠径ヘルニアなどに対する手術を行っています。できる限り、安全で体に負担の少ない低侵襲な治療を心掛けています。
体に負担の少ない治療を低侵襲治療といい、腹腔鏡手術がそれにあたります。具体的には、体に数カ所の小さな穴を開け、そこからカメラを入れて、お腹の中を大画面のモニターに映し出し、細長いマジックハンドのような器具を使用して手術を行います。傷が小さいため、痛みが少なく、回復が早いという長所があります。
当科では、最新の4K画質のよく見える高精細なカメラや、立体に見える3D腹腔鏡を使用しております。従来と比較し、よりよくみえる目(腹腔鏡)で手術を行っていますので、安全性、正確性が向上しています。
ただし、傷が小さくても、不充分な手術となれば低侵襲とは言えません。従来のお腹を開ける開腹手術が必要となることもあります。病気の状態や患者様の全身状態など総合的に判断し、最適な治療方法を決定します。
以前、兵庫県立がんセンター勤務時から、胃癌の腹腔鏡手術を多数行ってきましたが、現在は大腸癌や胆嚢、虫垂炎、鼠径ヘルニアなど多くの疾患に対しても腹腔鏡手術を行っています。最近は鼠径ヘルニアの腹腔鏡手術にも力を入れております。
足の付け根を鼠径部といいますが、同部がぽこっと盛り上がり、お腹の中の臓器、腸などが皮膚の下まで飛び出てくる状態を鼠径ヘルニアといいます。いわゆる「脱腸」と言われるものです。この病気に対しても、痛みが少なく、早く回復できる腹腔鏡手術を行っています。飛び出た臓器がお腹の中に戻らず、硬く腫れたり、痛みを伴う場合は、「嵌頓」といい、緊急で手術が必要な状態です。この「嵌頓」状態の緊急手術でも、できる限り腹腔鏡を用いて、手術を行っています。鼠径ヘルニアが疑われましたら、「嵌頓」状態となる前に、外科を受診していただければと思います。
当科での腹腔鏡治療について、説明させて頂きました。患者様は大きな心配、不安を抱えて受診されます。できるだけ丁寧な説明、丁寧な手術を心掛けています。少しでも「来てよかった」と思っていただける診療を目指しています。
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